イギリスで生きてみる
by pirimiso
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考えずにいられない事・エレファント(続き)
ずっと、頭のどこかで考えているのだ。
レッド・レイクの銃撃犯の少年の事を。

父は彼が幼い頃に自殺し、
母は重度のアルコール中毒の末に、
自動車事故で脳に障害を負って病院に入ったきり。
祖母に引き取られたものの何かの理由で、
祖父の家に移り住む。
そこはネイティブ・アメリカンの居住地域で、
彼と似たり寄ったりの境遇の子供たちが多い。
人々には職業につくのが困難で生活保護に頼って生きている。
僅かの金も、麻薬やアルコールに費やされてしまう。
荒廃するにまかせているような暮らしの中で、どんな希望が持てるだろう。
暴力が日常茶飯のすさんだ毎日から夢は生まれるだろうか。
少年はそんな環境で生きていたのだ。

そこでは、他の子供たちも同じように生きていた。
おそらく殺された子たちもそれぞれの重い現実の中にいただろう。
他の子が犯人になっても不思議でないフラストレーションが
それぞれの中にあっただろう。
希望の持てない環境の中で、もがいた末に行き着いたのが
彼にとっての英雄ヒトラーであったのはあまりに皮肉なこと。
若さは極端なことに引きつけられ、異常なことに付き従ってしまう。
あこがれの対象を巨大に美化して、自分もそうなりたいと強く望む。

祖父との仲はうまくいっているようだったという。
ただひとり彼が愛情を得られたであろう人物。
だが、思春期の心と言動は揺れ動き、最良の相手であったとしても
諍いは避けられなかっただろう。
何かがきっかけになって祖父に引鉄を引いてしまったあとは、
自分の中の暴れる波に押されるように犯行を続けたのかもしれない。

ネオ・ナチ信奉は彼には一種の仮想現実で、
ヒトラーを尊敬するという発言やネット上での書き込みは
現実逃避のためのゲームの一部ではなかったか。
暴力性への傾倒はあったにしても。

子供時代、少年少女期には自分を阻む者を消し去りたい欲望が
強く働くものだと思う。
障害となる事柄を適当に放っておいたり、うまく取り除いたり、
時には見ない振りしたりずるいやり方も含めて、まだ対応する術に
慣れていないから。
だが、強い衝動に突き動かされても「殺す」という手段に行き着く前には、
少なくとも一瞬の間はあって、自分を止めることができる。
それができないのは、その一瞬の時空に何も見出せないからだろう。
ほんの瞬きするほどの間に、今までに体験した人の温かさや愛情を確認できれば
人は衝動的な怒りで人を殺さないと思う。
彼はその瞬間を埋めるだけの体験を得られていなかったのかもしれない。

確かにこれは、どこででも起きうる事件だろう。
アメリカに限らず。
だけど、この少年が生きていた特殊な環境を考えることに
大事なポイントがある。
自殺率も、犯罪検挙率も、アルコール麻薬中毒率も、
虐待を受ける子供の率も、ごく若い少女の妊娠率も
アメリカの平均の数倍にのぼる現実が、ここにはある。
これを見ないで、若者を殺人鬼に変えてしまう瞬間を理解できるとは
思えないのだ。
日本で起きる凶悪少年犯罪と呼ばれるケースについても、
環境的にはずいぶん違うものの、その差異を見ていくと
共通することが見えてくると思うのだが。

Joeはこの事件に対して体験に基づいた考えをもっているだろう。
わたしの知らない何らかの情報が聞ければ、
見かたの方向性が変わる可能性もある。
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by pirimiso | 2005-03-29 16:22 | 日々の怒り?
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