ジェローム・K・ジェロームの「ボートの三人男」に出会って30年近く経つが、いったい何度読んだことだろう。
おそらく15回以上読んでると思う。
丸谷才一氏の味のある訳文が好きだ。
暑さで神経がキリキリしたり、反対にダラダラして何にも力が入らない今のような季節には
この本を開いて、100年以上前のイギリスにトリップしてしまうのだ。
テムズ河をボートでゆったりと旅をする若い男3人と一匹の犬に、仲間入りする気分で船旅へ出かけよう。
河の両岸の美しい風景を楽しみながら
水面に冷やされた風に当たっていると身体の芯からくつろいでしまう。
旅で語られる挿話はもうすっかり頭に入っていて、
暗誦できそうなくらいなのに、毎回笑ってしまう。
これって、そう、落語とおんなじノリだ~!
実際「ボートの三人男」のユーモア感覚は
長屋のご隠居とアホな若い衆の会話と同じニオイがする。
古典的なジョークって世界共通なんだろうね。
「アフリカのスーダンでは、Three Men in a Boatは去年のベスト・セラー本だった、
ってEconomist(英誌)に載ってたなあ。」と、Joeが教えてくれた。
スーダンでは内戦のせいで手に入る本がほとんど無くて、
数少ない本屋に並ぶのは、「デビッド・カパフィールド」や「ハック・フィンの冒険」
そして「ボートの三人男」などのクラシックだという。
内戦で恐ろしくひどい状況に生きる人々には、
100年前に優雅に舟遊びをするイギリス人の話など理解不能な部分が多いのに
それでもこのコミカルなストーリーには人気があって
飼ってるブタに犬のモンモランシーの名前を付けるファンもいるのだという。
わたしが中学生の時から読みつづけたこの本から、
イギリス人とその生活と歴史について知ったことはとても多い。
いまJoeを見ていると時々、三人男のジョージやハリスや「ぼく」ジョロームの
人柄の断片を見つけてしまう。
もともとは滑稽な話としてではなく、地域の歴史や地理の記録として書かれたのだという。
作者の抑えきれないおふざけ精神が炸裂してしまった結果らしい。
本に出てくる宿屋やパブは100年前と変わらず今も健在であったりする。(イギリスやね~)
Three Men in a boat をガイドブック代わりにテムズ河を旅しよう。いつか。
お気に入りの翻訳文だけど、
現在
Web上の原文で楽しんでいるところ。
訳文を記憶しているので読み易いのと、もともとわかりやすい表現の文章なので
とっつきやすい。古い版からのレトロな挿絵もあり。