Joeがアメリカへ発つ前に2人で観ようね、と言っていた
サイドウェイ
ぜったい飲みたくなるってわかってたから、ワインのボトルを用意しておいた。
おっさん2人連れのカリフォルニア・ワイナリー巡りだなんて・・・。
おしゃれなんだか、むさ苦しいんだか、ビミョーな設定。
第一目的は結婚前のナンパ旅行なんだろうけどさー。
CMのボイス・オーバーや若かりし日のTVドラマ出演で、
「そーいや、そんなヤツもいたっけー」という感じのパッとしない俳優と、
出版社に小説を売り込んでも全然相手にされず、
離婚の痛手からも立ち直れない英語教師マイルス。
おなじ「おっさん」として共感することがあるみたいで
Joeは「これって、オレのことやでー」と彼らのセリフにうなづく。
その同じセリフに対して、わたしは
「アホー、しゃっきりせえ!」と言いたくてもどかしさを感じている。
マイルスが出会う女性マヤも
ワインの味わいの微妙な差異になぞらえながら人生を語るくせに
タバコを吸ってたりするどうしようもない中途半端さ。
(わたしは、喫煙者の味覚を信頼しないのだ。)
ここでは、オンナにも「気骨」がない。
人生に揉まれているうちに色んなものが抜け落ちてしまうのだろう。
とても大事な何かさえも。(カドがとれて丸くなるとも言うが・・・)
こういうところに、この年代の人間がうまく出ているなー、と思う。
車窓のブドウ畑の整然とした緑に
焦がされそうに強い強いカリフォルニアの光を思い出す。
P : わたしらが行ったのは、もっと北のナパ・バレーのワイナリーやったね。
J : ・・・・ん、ワイナリーで寝ちゃったんだよな・・・・。
友人が御馳走してくれたワインの最初の1杯で、
すっかり酔っ払って崩れるように眠ってしまったJoe。
その後のことはほとんど覚えていないのだ。
わたしは、そのあいだ 友人N氏 と何種類ものワインと料理を堪能し最高にハッピーだった。
映画を観ながらも安ワインがすすみ、(いつものように)ほとんど1人で飲んでしまう。
Joeがたそがれた中年男らの想いに自らの人生を重ねている横で、
わたしは酒に酔いながら同時に醒めている。
「オトコって自分を憐れみすぎやでー。自業自得なだけやのにな」 と。