子どものとき、「タミーちゃん人形」がいた。
リカちゃんは超有名人で、だれもが知ってるけど
タミーちゃんを覚えてるのは、当時その人形を持っていた昭和30~40年代に小さい女の子だった人だけだろう。
あんまり、メジャーな人形ではなかったのかも。
リカちゃんより少し大人びていて、でもバービーちゃんよりはズングリしてて親しみがもてる子だった。
(バービーちゃんは頭が小さすぎて、コワかったー! 妹が持ってたのは、スカーレットちゃんって子だったよなあ~)
わたしは、タミーちゃんに最上の愛情を注ぎ可愛がってた。
ハギレでファッショナブルな洋服をつくってやり
お歳暮の空き箱の豪華なアパートを与えてやり
時には野っ原に連れて行って、オヤツを分けてやり
創造性にとんだ作り話で楽しませてやり
わたしの絶大な庇護のもとで
彼女は、なに不自由のない生活を謳歌していた。
(若い愛人を囲ってるオヤジみたいやなー、いま思うと。)
その愛するタミーちゃんの、美しくウェーブのかかった栗色の髪を
ある時突然、わたしは自分の手で、チョンチョンに短く切ってしまったのだ。
何がわたしに、そーさせたのかわからない。
2人がケンカしたわけではない。
彼女には、なんの落ち度も無かったのに。
こーゆーのを、DV(ドメスティック・バイオレンス)というのか・・・。
タミーちゃんは、頭の地肌が丸見えの情けない姿となり、
かつてのキレイなオネーチャンと同じではなくなってしまった。
そしていつしか、わたしの寵愛をも失ってしまったのだ。
あの後、彼女はどこに消えたのか。
傷心の旅に出ていったのだろう。
カワイソーなタミーちゃん。
いま彼女に代わって、わたし自身が被害者となる、時々。
とつぜん、無性に髪を切りたくなって、手がはさみをつかむのだ。(サイコか?)
今回の被害は、前髪だけなのでまだよかった。
しかし、異様に短い。滑稽といえるほど短い。
このサイコやろうは、前髪だけでなく、後ろの方まで切ったことがある。
あの時は、傷心の旅に出たかった・・・。
いったい何が、わたしをそーさせるのか。
この謎を解くために
タミーちゃんに帰ってきてほしい。